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【アスリートレポート】池田祐樹選手
クロコダイルトロフィー(20周年)

レース クロコダイルトロフィー(20周年) >>大会Webサイト
開催日時 2014年10月18-26日
結果 ステージ1:5位
ステージ2:8位
ステージ3:5位
ステージ4:11位
ステージ5:10位
ステージ6:10位
ステージ7:10位
ステージ8:10位
ステージ9:8位
最終総合順位:8位
獲得UCI ポイント 55 ポイント(XCO)
総距離 770km 総獲得標高 17,000m
場所 オーストラリア ケアンズ〜ポートダグラス

今年で20周年を迎える「クロコダイルトロフィー」。過酷なMTBレースの代名詞として知られ、常に私の好奇心をくすぐり続けていた。

そして、今年ようやく挑戦するチャンスを手に入れた。

シーズン後半からこのレースのために特化したトレーニングを積み重ねた。その目的はもちろん表彰台を狙うため、頂上に立つことだ。

今年からUCIの最上級のS1カテゴリーに認定されたことで世界中の強豪ライダー達がポイントを獲得のために集まっている。競技レベルは大会史上最高という情報だ。

しかし、私の目標は決して変わらない。挑戦するのみだ。

入念な機材関連の準備、レース中の補給計画、食事のコンディショ二ング、心身のピーキング、できることは全てやった。あとはスタートを待つだけ。

ステージ1:スミスフィールド(5周回):距離33km・獲得標高900m1周6キロコースを5周回するクロスカントリースタイル。今年初めてのクロカンレースだったが、スタートダッシュにも対応し、4番手でシングルトラックへ突入。ワールドカッパ―上位もいるので相当なスピードだが付いていけている。2周目に入るところまでこの位置をキープしていたが枯草がフロントチェーンリングに絡まり、一時ストップを余儀なくされる。焦る気持ちを抑えて冷静に草を取り除いて再スタート。順位は7位ほどまで落ちただろうか。ダッシュで追い上げるのではなく、あくまで自分のペースで追撃を開始。

ツイスティーで超タイトなシングルトラックを集中してブレーキングを最小限にバイクを進める。遠征直前ではあったがステム角度を変えたのが大成功。おかげでハンドリングの精度がかなり向上した。気付けばラスト2周で5位まで順位を戻している。トップとの差も1〜2分差。前も後ろも視界に入るほど白熱したバトルに心が躍る。

もう一つでも順位をアップさせたかったがさすがのレベルの高さ。5位でフィニッシュが限界だった。しかし、この世界の強豪が揃う中で戦うことができていることを実感した。

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©Crocodile Trophy
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ステージ2:ケアンズ-レイク・ティナルー:距離85km・獲得標高2,000m昨日のレースの疲労を若干感じているがそんなことは言っていられない。一日一日ワンデーレースのつもりで全力投球だ。

舗装路の長い登りをいきなり全開ペースでスタート。普段あまり出ない腰の痛みを感じ始め、身体中が悲鳴を上げ、先頭集団からジワジワと離されていく。

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なんとか心を切らさずに自分のペースで前を追った。オフロードに入ると20%以上の砂利道の激坂が延々と続く。プロファイルは見ていたが予想以上の過酷な路面状況だ。落ちてくる選手を交わし、10番台半ばから徐々に上げて一桁に順位を戻していく。しかし、一切余裕がない状況だ。後半は追いついたDavid選手(Scott)、Guido選手(Rocky Mountain/Craft)と協力し合いながら集団フィニッシュとなった。甘くない世界ということを改めて肌で感じた日となった。入念なストレッチで明日に備える。

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©Sayako

ステージ3:アサートン:距離60km・獲得標高1,500m
今日のコースはアサートンのMTBパーク。20キロループを3周。以前から素晴らしいシングルトラックの宝庫と聞いていたので乗ることを非常に楽しみにしていたステージだ。

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スタートからカナダのナショナルチャンプのコーリーがハイスピードでふるいをかけてくる。

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きついペースだがコースが楽しいせいか、7人に絞られた先頭集団に残っている。

2周目に入るとさらにペースが上がる。ロックセクションの下りとテクニカルな登りで前へ詰めることに成功。

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ミルトン選手(GoPro/Intense)と4-5位で前を追走した。登りではミルトンが前を引き、テクニカルセクションでは私が前を引き、お互いの長所を出し合ってスピードを高めた。身体的に超つらい状況にも拘らずこのセッションを思い切り楽しんでいる自分がいる。

おそらく相手も同じ気持ちだろう。会話以上にお互いを深く分かり合える不思議な感覚だ。しかし、最終周回のラストの登りでミルトンのアタックに対応できずに離されてしまった。

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下りで懸命に追いかけるも届かずに5位フィニッシュ。こんなにも楽しいコースとレース展開は久々だった。

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ステージ4:アサートン:距離72km・獲得標高2,200m朝起きた感覚は悪くなかったのだが、なかなか身体のエンジンがかかってくれない。長く単調なジープロードセクションはロードレース的な展開が始まる。集団のアタックの掛け合いに対応できないもどかしさ。テクニカルセクションが無い地足勝負の場面では上位の選手達に全くと言っていいほど付いて行けない。心身のダメージが機材にも伝わったのか、枝が後輪に絡まり変速の調子がおかしくなってしまう。エンドが曲がったか?軽いギヤと重いギアが使えない。折れそうな自分と必死に戦う。

リズムがかみ合わない我慢の時間だ。しかし、途中で勝負を捨てることだけはしたくない。まだ、4日目。半分もきていない。

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今日は11位、悔しいレースとなってしまった。

ステージ5:アサートン-アーヴァインバンク:距離96km・獲得標高2,700m疲労を隠せないほどに身体にダメージがきている。寝袋から這い出るように起き上がる。弱気にならないよう、自分を奮い立たせるためにもスタートから必死に追い込んだ。

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担ぎセクションを含むテクニカルなアップダウンセクションが続く。テクニカルな場所は付いて行けるが、地足勝負のセクションに入ると途端に置いて行かれてしまう。後半は前半稼いだ順位を守るだけの厳しい状況となった。レース後もフラフラでシャワーを浴びる行為もきついほどだった。

ステージ6:アーヴァインバンク:距離101km・獲得標高1,700m ステージの長さとロードレース的な展開に対応できない自分がいる。疲労も追い打ちをかけてくる。ネガティブな思考を懸命に頭から排除する。今日のステージは周りを気にせずにただただガムシャラにこぎ続けた。

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ひたすら続く荒野のアップダウン、照りつける灼熱の太陽。次第にその逆境を楽しみはじめる自分がいた。優勝という目標からは大きく遅れてしまい、その日をサバイバルしている悔しい状況だが、今は腐っている時間は無い。その事実を受け止めて前を見なければいけない!応援してくれているサポーターも後押しをしてくれている。

しっかり食べて、しっかり休んで、機材を整備する。
シンプルに今できることを必死に頑張ろうと改めて心に誓った。

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ステージ7:アーヴァインバンク-スカイビュリ−コーヒー:距離127km・獲得標高1,300mクロコダイルの最長ステージ。おそらくこの日が一番疲労を感じた朝だっただろう。
前半はかなり良い位置を取り、40キロあたりまで先頭集団をキープ。ところがフィードゾーンでばらついたときにできた差が命取りとなった。強風の向かい風の長い平坦セクションが行く手を阻む。100mほど前に先頭集団がいるのに追いつけない。もがいても次第に離れていく。遅れたもう一人の選手と協力したが 力が及ばず、取りこされてしまった。しばらくすると後方から来た集団に吸収されてしまう始末。ペースを落とさないように先頭交代をしながら距離を消化していく。この集団にはアマチュアのトップ選手達も混じっている。とても強い。自分の弱さも、世界の広さも痛感した。終盤は意地を見せてできるだけ先頭で集団のスピードを引き上げ、少しでも総合タイムを早くするようベストをつくした。

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ステージ8:スカイビュリ―-ウェザービーステーション:距離101km・獲得標高1,400m

大きな山火事があり、キャンセルの可能性もあったステージ。キャンセルを期待していた選手もいたが、自分はどうしてもレースがしたかった。もちろん8日目で心身共にギリギリのところにいたが、順位を上げるためにはスタートしなければチャンスも得られない。特に今日は最後のロングステージ。踏ん張るときは今!下手したら順位を落とすリスクもあるが、チャレンジしなければ何も始まらない!実際、前半は第3集団あたりから順位も上がらず、厳しい時を過ごした。

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しかし、中盤のテクニカルなセクションで集団から飛び抜けて勝負をかけた。これで波に乗り、独走で前を追った。集団から単独で抜け出したことは賭けだったが、足の調子が上がってきていることを感じていたので不思議と自信はあった。GCで8-9位を争っているGuido選手に追いつくことに成功。かなり離されていたと思っていたが、まだ負けていない。まだいける!最後までGuido選手と追い込みあってフィニッシュゲートをくぐった。

8日目にきて再び湧き上がるエネルギーを感じている。明日へ繋がる走りができた。

ステージ9:ウェザービー-ポートダグラス(TT):距離30km・獲得標高350m

泣いても笑っても今日が最後。GCは8位。後ろにはわずか数分差でGuido選手が迫っている。前は20分ほど。思いはいろいろあるが、今までの8ステージは一旦忘れて今日が初日のつもりで臨んだ。TT形式でTOP10ライダーは2分毎のインターバルスタート。悔いが残らないよう、今までの積み上げてきたことを全て出し尽くすためにも一こぎ目から全力を込めた。疲労はピークなはずなのにパワー数値が出る。スピードにも乗っている。オーバーペースにも感じるが今日はこれでいい。潰れるまで思い切りこいでやる。テクニカルなダウンヒルセクションでも集中力が研ぎ澄まされてとても良い走りができている。むしろスリルを楽しんでいた。下りが終ると苦手意識があった平地セクション。しかし、パワーは落ちることなく踏めている。最後は3キロ続く砂浜のストレート。

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体全体が爆発寸前だ。前のライダーは見えているが距離は縮まらない。向こうも必死に追い込んでいる。リスペクトだ。とにかくフィニッシュまで自分の身体よ、耐えてくれ!フィニッシュゲートをくぐる瞬間まで文字通り全ての力を出し尽くした。

もう何も残っていない。

結果、8位。9日間総合も8位。

UCI最高カテゴリーS1での順位と考えれば私の競技人生で過去最高の結果かもしれないが、目指していたのは優勝だった。

そこのみを考えて準備をしてきた。

8位という結果は目標の優勝からは程遠い。

しかし、今はなんとも清々しい。

それほどまでに出し切って負けた結果。

みんな本当に強かった。心からリスペクトできる。ありがとう。

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©Crocodile Trophy

自分の弱点を嫌というほど見せつけられて、泣くほど悔しい思いをした。

今すぐにでも改善するトレーニングを始めたい。ワクワクしているほどだ。

自分が世界のトップに通用するチカラを持っている部分も発見できたことも大きな自信となっている。

この9日間で得た経験は私のこれからの競技人生に大きな刺激を与えてくれた。これも準備から全力投球したおかげだ。

これからも真摯に、100%で自分に、勝負に向き合っていきたい。

応援してくれた皆様、今回のビッグチャレンジを実現させてくれたスポンサー、仲間、家族に心から感謝を申し上げます。

ありがとうございました!

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【レース機材】
バイク: Canyon Grand Canyon CF SLX 29
ドライブトレイン:SRAM XX(134&32t )
フォーク: MAGURA TS8 29
ブレーキ: MAGURA MT8
ステム/シートポスト/ハンドルバー: RITCHEY Super logic/TRAIL/WCS Carbon
ホイール: DT Swiss 29 Spline XRC1250 with Stan's tubelesskit
タイヤ: Cont inental X King 2.2 Protection
グリップ: Ergon GS1
グローブ: Ergon HX2
サイクルコンピューター:ジュールGPS(サイクルコンピューター)
シューズ: North Wave Extreme Tech Plus
ペダル: Crank Brothers Eggbeater 11
サングラス: Limar
ヘルメット: Limar
ボトルケージ: Topeak Shuttle Cage CB
チェーンオイル:Finishline Ceramic Wet Lube
補給食:GU(ドリンク) 、パワーバージェル&VESPA プロ
リカバリー:C3fit コンプレッションソックス
テーピング:ニューハレ

【パーソナルスポンサー】
自転車コーキ屋
スポーツクラブ ルネサンス
パワーバー
CycleOps:パワータップ、ジュールGPS(サイクルコンピューター)
C3 フィット:コンプレッション
VESPA
NEW HALE: テーピング
HALO HEADBAND:ヘッドバンド
Fuj imoto Farm 弥之助蓮根
なでしこ健康生活・生きている玄米
ヒロコンフーズ

【チームスポンサー】
Ergon/Topeak/Canyon/SRAM XX1/Magura/RitcheyBicycleComponents/ContinentalTires/DT Swiss/Primal Wear/Finish Line/Northwave Shoes/Jagwire/Crank Brother/Chamois Butt'r/Stan's No Tubes/EPIC Action Cam

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